「それでは、第一回の講義は、人類の出現と進化のお話です。一先ず、教科書を開きましょうか」
ふーぎは教科書を片手に教鞭に立つ。
「700万年前から600万年に、アフリカにて猿人《えんじん》と呼ばれる二足歩行できるお猿さんがいまして。このお猿さんが人類の祖先と見做されています」
青年が挙手して尋ねる。
「なぁ、一つ疑問なんだが。なんで、その猿人って奴が人類の祖先ってわかんだよ?」
「二足歩行してるからですよ。二つの足で立って歩けるなら、人類の祖先でしょう、って感じです。基本、考古学はアバウトです。……恐らく、そうであろうと学者が言うと。多分そうだろうと学会は頷き。実はそうだった、とマスコミが持ち上げ。本当はそうだったんだと世間へと広がっていきます。皆、よしと確認を取って繋いでいくのですよ」
「えっ、なにその出来の悪い報連相」
「教科書確認よし、資料確認よし」
「いや、さっきから教科書開いてないよね。ただ指さし確認してるだけだよね。内容確認してないよね」
「大丈夫ですよ。頭の中に入ってるので。で、200万年前に猿人が進化して、原人《げんじん》と呼ばれる投手が出来るお猿さんに変わります」
「投手ってなんだよ!」
「野球ですよ、野球。チンパンジーをみたら分かると思いますが、彼らは殆ど下投げしか出来ません。ですが、原人になると、肩甲骨が発達して上投げが出来ます。つまり、上投げできる原人はやきう民の祖先だったというわけです」
かきかきかき
やきう原人 (200万年前の氷河時代にて生まれる)
「ほうほう、って納得できっか! 黒板一杯に書く内容じゃないよね、その絵!」
「…………」
かきかきかき。
-=γ `ヽ {:: `ヽ ,ィ _
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次回、氷河が終わり。やきう原人、死す。
「予告でもう死んでるよ、その絵!」
「さて、猿人と原人の違いも分かったようなので次に行きますよ。原人は200万年前の氷河時代に存在したと確認されており、石を砕き。鋭利にした打製石器をもちいていました」
「おお、それで狩猟とか採集とかしてたんだな」
「まぁ、それもありますが、大事なのはこれが出来るからです」
かきかきかき
i⌒i
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| | 彡 と
| | _ノ ー、
(ミ)、 !フ /
¢\二二二__ノ
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/ ソ⌒ 、ヽ
( < ヽ )
⊂_) (_つ
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()()三三三二
 ̄
「野球じゃねぇか、野球知らねぇけど、ぜってぇ野球だろ、その絵!」
「こんな感じに原人は氷河時代に打製石器を用いて野球をしていたわけです。さて、その原人も進化して。私達の直接の祖先に当たる、新人(ホモ・サピエンス)が二十万年前に生まれます」
「つまり、原人は全て新人へと進化していったと」
「いえ、全ての原人が新人に進化できるわけではありませんよ。新人に進化、適応できなかった。他の原人や旧人と呼ばれる、お猿さん達は淘汰されました」
「淘汰ってどういう意味だ?」
「進化や適応できなかったお猿さん達は。新人の、つまり貴方方の祖先によって殺され尽くされましたね」
「……なんで、そうなったんだ」
「考えてみて下さいよ。……人間の子供程度の知能あるお猿さんがいて。そのお猿さんが打製石器を造れ、振り回したら何するか分からないじゃないですか。子供程度の嘘もつく知能ももっていますし。寝込みに殺しにくる恐れもあります。だから、貴方方の祖先は、そういった新人の成れ損ない。つまり、原人達を殺し尽くしました。まぁ、ちょっと着色して言ってますが、大筋は合ってますよ」
「…………」
「さて、華やかなお話はこれぐらいにして。今の貴方たちも新人にあたります。そして、新人が造った洞窟として有名なのはフランスにて見つかった。ラスコーの洞窟の壁画ですね。此れは、1万5000年前に新人によって壁画に動物が描かれています」
「……壁画ぐらいで、教科書に載るなんて大袈裟だな」
「…………」
かきかきかき
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丁 |
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お前、それサバンナでも同じ事
いえんの?
「絵で、返事するな、絵で! 第一、ラスコーの洞窟ってサバンナじゃねぇだろう、フランスってとこだろうが!」
「良い突っ込みですね。さて、あと伝えることがあるとするなら。一万年ほど前は旧石器時代と呼ばれ。新人も打製石器を使っていたことと……」
ふーぎは頬に手を当てながら続ける。
「ああ、そうそう。気温が温暖化する過程で大型動物が壊滅しちゃって。素早い小型動物を狩る過程で石を磨くことで殺傷力と軽量化を可能とした。磨製石器《ませいせっき》を生み出しましたね。また、温暖化によって、農耕や牧畜が可能となりました。磨製石器を用い、農耕や牧畜を果たした時代を、新石器時代と定義されてますよ」
「要するに、氷河時代や旧石器時代には、打製石器を用いられ。新石器時代から磨製石器を用いられてたんだな」
「そう言うことです。取りあえず。一回目はこんなものですかね。それでは、また、次回お会いしましょう」
「えっ、誰にいってんの」
「異なる時空から眺めている人達ですよ」