「さて、今回は大化のバーサーカーこと、天智天皇の亡くなった後のお話ですよ。付いてきて下さいねぇ」
「へいへい」
「天智天皇が亡くなると。天智天皇の息子、大友皇子（おおとものみこ）は天智天皇の陵墓を造るという名目で。滋賀の大津にて兵を集め始めました。天智天皇の弟、大海人皇子（おおあまのみこ）は自分を始末するために徴兵したと感づき。吉野（奈良県）から逃げ。自分の拠点がある美濃（岐阜県）へと向かいます」
「互いに動きが早ぇな。で、大海人皇子ってのは逃げきれたのか」
「逃げ上手な若君がびっくりするほど。上手く逃げ切りましたよ。地方豪族を傘下に収めながら逃げ続け。美濃に辿り着くと、東国から兵をかき集め。膨大な兵を徴兵するほど逃げ上手でした」
「……なんかキナくせぇな。急ごしらえにしては兵の動員が整いすぎてやがる」
「おっ、良いところに目を付けましたね。実は、この記述。日本書紀からの記述でして。この戦いの勝利者となる。大海人皇子（天武天皇）の皇位簒奪を正当化するために書かれています。……ですので、実際は大友皇子が先に動いたのではなく。大海人皇子が先に動いたと考えられてすよ。じゃないと、こんな迅速かつ短期間に地方豪族を傘下に入れ。兵を動員するなんて出来ませんからね」
「バーサーカーの兄と同様に、したたかな奴だな」
「この戦いを壬申の乱と言います。大海人皇子は大友皇子の軍を打ち破り。最後を悟った大友皇子は自刃し。大海人皇子がこの戦を治めます。戦いを終えると大海人皇子は都を奈良に戻すことを命じ。後の飛鳥清美原宮にて、天武天皇として即位します。そして、自分に味方した豪族に褒賞を与えますが、過分な地位は与えず。天皇の権力を絶対とした中央集権を確立させました」
「中央集権ねぇ。因みに、どんなことをやったんだ」
「八色の姓（やくさのかばね）と呼ばれる。天皇中心の新たな身分秩序を造りました。これまでは、氏姓制度によって身分秩序が成り立ってましたけど。形骸化しており、時代にも合わないため。新たな身分秩序を構築しました。この八色の姓は八段階に分かれており。皇族には真人（まひと）が授けられ。有力な臣下には朝臣（あそん）が授けられました」
「真人に朝臣ね。あとの姓はなんなんだ」
「宿禰（すくね）、忌寸（いみき）、道師（みちのし）、臣（おみ）、連（むらじ）、稲置（いなぎ）となってますが、受験やテストには殆ど出ないので。まぁ、こんなのがあるんだなぁ程度で結構ですよ」
「聞いては見たが。覚えられねぇわ」
「因みに、真人は道教（中国の宗教）に於ける。仙人、或いは全ての人の理想人を意味しており。朝臣は、敬愛なる臣下という意味がありますよ」
「真人が人としての理想人ねぇ。皇族様々ってか」
「そういう事になりますね。また、天武天皇の時代から天皇の呼び名が正式に使われるようになります。推古天皇が隋に送った文面で、自らを天皇と言う言葉が使いましたが。日本に於いて正式に使い始めたのは天武天皇が始まりですよ」
「ほうほう」
「天武天皇は天皇中心の身分秩序を造り上げると亡くなり。天武天皇の意思は妻の持統（じとう）天皇に引き継がれていきます。……といった所で今回は此処までにしましょうか。次回、持統天皇、息子を溺愛し。奈良時代がややこしくなる。おったのしみにぃ」
